Tおやじの日記帳~TakaWata’s diary~

主にPTA広報紙、その他の話題を書いてます!

あるPTA会長のアクシデント 第3話

緊張の瞬間

帽子と靴が出されてきた

教頭が職員室の金庫から帽子と靴を持ってきた。私も話で聞いただけだったので、いざ見るとなると少し抵抗感があった。

 

帽子と靴が机におかれた。むごい。ひどい。紅白帽子がカッターで切り裂かれ、「○ね」「バカ」と書かれている。靴も同じような状態だ。他人の子どもの話では済まされない。ショッキングな風景だった。

 

思わず自分の子ども、小学生の娘の顔が頭によぎった。もし娘が同じ目に遭ったら冷静でいられるだろうか?私だって涙が出るかもしれない。そんなことを思わずにいられない状態だった。

 

校長も教頭も無言だ。横に座っている親の顔を見た。泣いている。嗚咽をあげている。辛い。本当に辛い。可哀想とかそんなもんじゃない。言葉では言い表せない。

 

長い沈黙のあと、校長が話し出した

「お気持ちは大変辛いでしょう。このようなことが起きてしまったこと、深くお詫びいたします。我々もまずはお母さんに現実を見ていただきたいと思いました。」

 

「この帽子と靴を見て、どう判断するかはお母さんにお任せしたいと思います。」

 

わかっていたとはいえ、ショックだろう。大切に育ててきた子どものため、毎日の生活のために一生懸命働いて、子どものために買った帽子と靴が無残な姿になっている。

 

愛する我が子が大切に使っていたものがこんな風になるとは、被害に遭った子どもと親には一気に地獄に落とされた気分になると思う。

 

たまらず私が話した

親は沈黙したままだ。少し空気を変えようと、私が声を出した。「その後何か変わったことはありませんか?」

 

以前に聞いていたことだが、何か話さずにはいられなかった。

 

校長が「このことが起きてから、体育などの授業の時などは教室にカギをかけています。職員も頻繁にトイレなどを見回るようにしています」と言う。

 

そこで親が口を開いた

「犯人はまだわからないんですか?」突然親が聞いた。校長は「生徒全員に何かを知っているか?何か見たことはないか?のアンケートを実施しましたが、まだ有力な情報はありません」

 

校長も辛いだろう。学校としては犯人捜しなどやりたくはない。被害者の親からすれば、一日も早く犯人を探し出し、目の前で謝ってもらいたい。

 

PTA会長としても辛い。親の気持ちはわかる。わかるが、犯人捜しが正解だろうか?親の言うように、警察が来て生徒全員が指紋を採取などしたら、無実の生徒がどれほど嫌な思いをするか。

 

現実的に考えておそらく警察に届け出ても、警察は生徒に指紋採取などやらないだろうが、被害者がどうしてもとお願いすればやるのだろうか?経験のないことなのでわからない。

 

それよりもこのことが大きな騒ぎとなり、被害者の子どもが中学時代に心に大きな傷を負うことが心配だ。被害に遭った、警察を呼んだ、犯人がわかった。これは何か違う気がする。

 

親の怒りは強い

違うと思っても、親の怒りは収まらない。「これ以上何も進まないなら、私は知り合いの警察に相談します。」と言う。

 

校長も警察沙汰は仕方がないとは言っても本心ではない。そしておそらく警察も動かないと思っている。犯人とは言っても中学生。まだ子どもなのである。

 

学校としてはどうにか親の怒りを沈ませ、冷静になって今後のことを考えようとしている。これは、決して問題を大きくして学校の評判が悪くなることを恐れているわけではない。

 

校長なりに、被害者の生徒と親のことをよく考えている。何とかしてあげたいという気持ちは、私にはよく伝わっていた。

 

これが現実

いざ自分の身近なところで起きたら冷静に考える

テレビでいじめについて報道されることが多い。校長が謝罪する姿をよく見る。そのニュースを見る視聴者は、「悪いのは学校だ。すべてが後手、後手に回っている」と思う。

 

私も同じことを思っていた。しかし自分がPTA会長を務める学校でこのようなことが起きると、いろんな方面から物事を考える。決して短絡的に考えてはいけない。

 

被害者も加害者も中学生という「子ども」なのである。たった12歳〜15歳の子ども。加害者のしたことは明らかに悪いことだが、万が一警察の介入などあったら「犯罪者」のレッテルを貼られてしまう。

 

非常に気まずい雰囲気が流れていた。

 

続く。